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桜の向こう
また今年も桜の季節がやってきた。
コズミ博士の研究所でもこの時期花見を楽しんでいる。
今年の場所取り要因はフィリップと美香。
「2年連続だよ、全く、仕事進まないじゃないか」
ノートパソコンを持ち込んで仕事をしているフィリップ
「今やらなくても間に合いますよ、せっかくの景色なんですから楽しみましょうよ」
美香は桜を見上げる。
広いシートに微妙な距離
満開の桜に見向きもせずモニターを睨むフィリップ
きっと…
私でなくてここにいるのがフランソワーズさんなら?
一緒に綺麗ですねと桜を見上げているんだろうな…
美香はぐっとくる切なさを堪えた。
「そういえば最近島村さんお休みしていますけど、具合でも悪いんですか?」
美香の質問にフィリップの肩が動揺したように動く
「ギルモア博士の学会のお供なんじゃないかな?同行すると長くなるから」
「そうなんですか…フランソワーズさんはお元気なんですか?」
フィリップは視線をモニターから桜に映す。
彼は今桜を見ていない。
きっとその先のあの人を思っている。
「元気…なんじゃないの?僕も最近会っていないけど」
表情は固いまま。
美香はフィリップとの間に時々壁のような物を感じていた。
それはいつも「あの人」達に関わっている。
それがとてももどかしく、近くにいるようで遠く感じていた。
美香は再び桜を見上げる。
散り始めた花びらが舞う
寂しさが再び美香を襲う
2019.4.8
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