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船が沈む前に 2
フランソワーズは1人ドルフィンのコクピットにいた。
目の前に吊り下げられているイルカのマスコット。
この非常事態にもかかわらず、楽しく揺れているようにも見えた。
これを付けた時、真っ先に怒ったのはジェットだった。
「こんなんが目の前で揺れてたら、集中出来るわけねーだろ!」
そんなジェットをいつもまあまあと落ちつかせていたのはピュンマ
「殺風景だからってフランソワーズが付けたんだ、いいじゃないか、それ位」
フランソワーズは背伸びをして手を伸ばす。
高い所に吊り下げたから、背伸びをしても届かない。
爆発音が迫ってきている。
もうすぐこの船は沈む。
早くしなければと焦るほど、届かなくなる。
もう少しなのに届かない。
フランソワーズの視界に急に腕が伸びてきた。
ひょいっといとも簡単にイルカを外す。
「はい」
振り返るとそこにはジョーがいた。
「早くしないと船が沈んじゃうよ」
「あ、ありがとう」
「キミが避難していないから、みんなが心配していたよ、さ、急ごう」
フランソワーズはイルカのマスコットをぎゅっと握る。
そう…これは初めてジョーと2人きりでドライブした時に見つけたんだった。
だから置いていけなかった。
彼は覚えてはいないと思うけれど。
あなたとの初めての思い出だから…
前を走るジョーの背中を必死に追いながら、この先の不安を紛らせるために、イルカをもう一度ぎゅっと握った。
2016.2.17
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