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アナバ

 

 

 

 

 

「この辺でいいかしら?」
「これくらい広く取らないと全員入らないでしょ?」

ジョーとフランソワーズは大きなブルーシートを広げる。

「この辺は穴場なんだけど、こんなに見事な桜だから、今日は混むかもしれないよね。

後はぼくが場所取りしているから、キミはダイジンの所に手伝いに行って来たら?」


桜の開花の時期に、みんなが集まり花見をしようという事になり、じゃあコズミ博士の所の研究員も…なんて声をかけたら20人近くになってしまった。

ダイジンは花見弁当作りに大騒ぎで、猫の手も借りたいくらいだろう。


「そうね、手伝いに行ってくるわ、ちゃんと場所取りお願いね」

「うん、任せておいて」


フランソワーズを見送ると、ジョーは持ってきたリュックから本を出し、シートに仰向けに寝転んで本を読む。
視界の隅に桜が見える。


活字を追いながらもポカポカ陽気につい眠くなり、いつの間にか眠ってしまっていた。


話声に目が覚めると、数人の女の子がジョーに向かってスマホを向けていた。

「な⁈何?」

いきなりの事で飛び起きる。

女の子達は「起きたわ」とひそひそ話をする。

「き…君たちは何?」
半分寝ぼけて半分動揺しまくったジョーが女の子達に問う。


「女子高生よ、桜が綺麗だからお花見に来たら、あなた気持ちよさそうに眠っているから…学生?」
女子高生のひとりがブルーシートに上がってくる。

「ううん、もう社会人だよ、こう見えても」
外見18歳なのだから、学生と思われても仕方ない。


「お菓子持って来たんだけど、一緒にどうですか〜?」
もう1人の女子高生が、コンビニの袋いっぱいのお菓子を持ってブルーシートに上がってきた。

「ありがとう、でも場所取りしてるからな」

「ちょっと位いいじゃないですか〜」
また後ろから3人位女子高生が現れる。


女子高生のお菓子花見の真ん中に座る形になってしまい、どうしてみようもないジョーに、助け船がやってくる。



「あぁもう、迷惑そうな顔してるでしょ?あなた達あっち行きなさいよ!」

制服の女子高生集団に一喝入れ、女子高生集団はブツブツ文句言いながら立ち去った。

「ありがとう、助かったよ」

「隣にシートいいですか?」
女子高生を追い出した女性が、カバンから出したものはブルーシート。

「あ、いいですよ」
自分の土地じゃないんだから、別に許可なくとも…

ジョーの一言で、その女性は「いいそうよ!」と確かに誰かを呼んだ。

またまたぞろぞろやってきた。


「君たちは…何者?」

「女子大生で〜す!サークルの花見なの!実はさ、男子達がみんなイケてないのよ、

だから是非一緒に盛り上げてもらいたいな〜って」


女子高生追い出しておいて…。
ジョーは冷めた目で女子大生を見た。


「お弁当作って来たんですよ!よかったら!」
すかさず1人の女子大生が重箱を差し出す。

「でもサークルの人に食べてもらうために作ったんでしょ?」

「いいんですよ〜あいつらなんかコンビニ弁当で充分!」

言われちゃってるよ、頑張れ男子大学生…。


ちょうど小腹がすいてきた、ちょっとだけいただくか。

「ちょっとだけもらうけど、後は買い出し頑張ってる男の子達に食べさせてあげてよ。」


フランソワーズもきっとダイジンの手伝いをしながら 手作りの弁当を作ってくれるに違いない。
ここでお腹いっぱいにしたら…フィリップに食べられる。

それだけは避けたい。



少しだけ女子大生の弁当をつまみながら、先程と大して変わらない質問攻めに
途方に暮れている時、カツカツとヒールの音が近づいた。

 

「あ、そこ!私たちが1週間前から取っていた所よ!」

「「え?」」
女子大生とジョーは同時に聞き返す。
そんなはずはない。
ここには場所取りしていた痕跡はなかったのだから。

「ここはやめてよ!大学生はうるさいんだから!」
半ば強引に女子大生達を追い出し、ジョーが敷いたシートの隣にちゃっかりシートを広げる。

「?」
唖然として見ているジョーに

「あなたも学生はうるさいからいなくなってもらってよかったでしょ?」

「は…はぁ」

「うちの会社は毎年ここで花見をしているの」

いや、それ理由になってないから。

ジョーが何かを言い出そうとした時

「ビール飲みます?」
OLが缶ビールを一本差し出す。

「ハンドルキーパーだから飲まないよ」

「誰かに運転替わって貰えばいいのよ!それにしてもシート広げてるわね、何人位来る予定?」

「20人位かな?」

「同じ部署内とか?あなた新入社員でしょ?この前まで大学生って顔してる」

「いや、大学はだいぶ前に卒業したし、部署内ではないな。」

「へぇ、うちの部署、新入社員入って来なかったのよ!

だから私が取る羽目になったんだけど、隣の部署には数人新入社員入ったのに、ありえないわ」

それは残念ですね。

ジョーは時計をちらっと見た。
そろそろみんなが来る時間…


「ちょっと!ズルいんじゃない?」
先ほど追い出された女子大生集団がやって来た。



「あなた達学生はうるさいのよ!」
「あなただってこの前まで学生でしょうよ!急に社会人面やめてくれる?」
「何言ってるのよ!2年目よ!あなた達と一緒にしないでよ!」
「2年目なのにまだ場所取りしなければならないなんてよっぽど…」
女子大生がクスッと笑う。
「何が言いたいのよ!」



オイオイ…何もここで喧嘩始めなくても…。


「ちょっと〜!最初にこの場所取ったのは私達なのよ!」
先ほどの女子高生が戻ってきた。



あぁ、余計ややこしい…。
 


三者三様言い分を叫び合うが、ジョーにはただの騒音に聞こえる。

早く誰か来てくれ…。


 


「何をしているの?」

その一言に女子高生と女子大生とOLがぴたりと止まった。

「あぁ、フランソワーズやっと来てくれた」

ジョーはフランソワーズの元に走り寄り、喧嘩していた女子達の目の前で抱きついた。

 

 


「「「は?」」」

 

 


女子達が思わず同時に呟く。

フランソワーズもいきなりジョーが抱きついてきて慌てる。
「ちょ…ちょっとジョー!どうしたの?」
「助けてぇ…」

女子達はいきなり現れたフランス美女に抱きついたターゲットをしばらく眺めていたが、

女子高生のスマホのシャッター音を合図にするかのように、蜘蛛の子を散らすように退散した。

「どうしたの?」
フランソワーズは抱きついたジョーの肩を起こす。

「疲れたよ…」


 


穴場の桜スポットに、全員とコズミ博士とその研究員総勢25名が集まった。
ダイジンの弁当はみんなに好評だったし、お酒も入りみんなが盛り上がっていた。

フィリップはフランソワーズの手作り弁当に幸せ気分になってはいたが、どうしても目の前の光景に納得がいかなかった。

フランソワーズの膝で気持ちよさそうに眠っているジョーの姿に、フィリップ以外の誰もが笑って見ていた。

〜おっしまい〜

​2016.4.11〜4.12

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