
day dream
1
ロードバイクを必死に漕いだ。
季節は春から初夏に変わりつつあったが、パーカーをしっかり着込みフードを被る。
海岸道路に出ると、真っ青な海が広がる。
飛び出した理由は2つ。
助けられなかった。
彼女の背中の怪我は思った以上に酷かった。
そしてその怪我は何の痕跡も残さず、綺麗に「修復」される。
自分達の身体が作り物だと改めて感じてしまう。
海岸に降り、無造作にバイクを横倒しにする。
まだ砂浜は熱くない。
砂浜を歩き、人気がない所にどかっと座る。
スニーカーを脱ぎ捨て、裸足になる。
ぼんやり海を眺めていた。
まだ泳ぐ気候でもないから、サーファーがいる位だ。
この海にずっと沈んでいたら、身体が再生される…なんてことはないよな。
ふっと溜息をつく。
「こんな所にいたのね」
隣を見上げると、いつもの笑顔。
「フランソワーズ⁈怪我は⁈」
驚いているジョーなど気にせずに、フランソワーズは、サンダルを脱ぎ、素足になり、ジョーの隣に腰掛ける。
「いい天気ね、季節も今が1番いいみたい」
フランソワーズは遠く、海を眺めている。
「こんな身体にされて、不幸もあったけれど、悪いことばかりじゃないわ」
「身体は作り物かもしれない…でも心は…天気が良くて嬉しかったり、綺麗な景色に感動したり…そして…」
フランソワーズはジョーを見る。
「あなたを好きだって気持ちも…作り物じゃない…だから」
ジョーが被っていたパーカーのフードを掴んで下げる。
「回りにはこんなに素敵な景色が広がっているのに、自分から視界を遮っちゃダメよ…」
ジョーの栗色の髪が風に靡いた。
ただ無言でフランソワーズを見つめているジョーに
「元気出して」と微笑んだ。
その瞬間…。
目の前が真っ白になった。
気がついたら、そこには誰もいなかった。
2
慌てて研究所にもどると、フランソワーズはまだ眠っていた。
ふっと安堵の息を吐き、ベッドサイドに腰を下ろす。
「君には敵わないよ…。」
あれは白昼夢だったのか…。
意識のないフランソワーズが自分を励ましに来たというのか…。
握っていた手がピクリと動く。
瞼が開き、綺麗な蒼い瞳がぼんやりと焦点を合わそうとしている。
「ジョー?」
「…気分はどう?」
「私…」
「何処か痛い所はない?」
「…大丈夫よ」
フランソワーズは自分の身に起こった出来事を思い出し、顔を曇らせる。
「博士が1日安静にしていろって」
「そう」
「ごめん…キミを助けられなかった…」
「あの場合は仕方ないわ。私も注意が足りなかったのよ」
「索敵していたら、自分に注意なんて払えないよ…ボクはキミを助けられないのに、いつもキミに助けられてる…」
フランソワーズが首を傾げる
「夢の中でキミに励まされたよ…」
「…え?」
フランソワーズが驚く。
「私も今夢を見ていたわ…あなたに…ううん…何にもない」
急に顔を赤くして俯く。
「何?」
フランソワーズは下を向きながら小さい声を出す。
「『この身体は作りものかもしれないけれど…ボクがキミを想う気持ちは作りものなんかじゃない』…って…」
「え⁈」
ジョーが大きな声で驚いたので、 フランソワーズは顔を上げる
「…同じ事言われたよ…」
2人はしばらく顔を見合わせ、笑った。
2015.5.30~6.1