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day dream

 

 

 

 

ロードバイクを必死に漕いだ。

季節は春から初夏に変わりつつあったが、パーカーをしっかり着込みフードを被る。

海岸道路に出ると、真っ青な海が広がる。

飛び出した理由は2つ。

助けられなかった。
彼女の背中の怪我は思った以上に酷かった。

そしてその怪我は何の痕跡も残さず、綺麗に「修復」される。

自分達の身体が作り物だと改めて感じてしまう。

海岸に降り、無造作にバイクを横倒しにする。
まだ砂浜は熱くない。

砂浜を歩き、人気がない所にどかっと座る。
スニーカーを脱ぎ捨て、裸足になる。

ぼんやり海を眺めていた。
まだ泳ぐ気候でもないから、サーファーがいる位だ。

この海にずっと沈んでいたら、身体が再生される…なんてことはないよな。

ふっと溜息をつく。

「こんな所にいたのね」

隣を見上げると、いつもの笑顔。

「フランソワーズ⁈怪我は⁈」
驚いているジョーなど気にせずに、フランソワーズは、サンダルを脱ぎ、素足になり、ジョーの隣に腰掛ける。

「いい天気ね、季節も今が1番いいみたい」
フランソワーズは遠く、海を眺めている。

「こんな身体にされて、不幸もあったけれど、悪いことばかりじゃないわ」

「身体は作り物かもしれない…でも心は…天気が良くて嬉しかったり、綺麗な景色に感動したり…そして…」
フランソワーズはジョーを見る。
「あなたを好きだって気持ちも…作り物じゃない…だから」

ジョーが被っていたパーカーのフードを掴んで下げる。
「回りにはこんなに素敵な景色が広がっているのに、自分から視界を遮っちゃダメよ…」

ジョーの栗色の髪が風に靡いた。

ただ無言でフランソワーズを見つめているジョーに
「元気出して」と微笑んだ。

その瞬間…。

目の前が真っ白になった。
気がついたら、そこには誰もいなかった。

 

 

 

 

 

慌てて研究所にもどると、フランソワーズはまだ眠っていた。

ふっと安堵の息を吐き、ベッドサイドに腰を下ろす。

「君には敵わないよ…。」

あれは白昼夢だったのか…。
意識のないフランソワーズが自分を励ましに来たというのか…。

握っていた手がピクリと動く。

瞼が開き、綺麗な蒼い瞳がぼんやりと焦点を合わそうとしている。

「ジョー?」

「…気分はどう?」

「私…」

「何処か痛い所はない?」

「…大丈夫よ」
フランソワーズは自分の身に起こった出来事を思い出し、顔を曇らせる。

「博士が1日安静にしていろって」

「そう」

「ごめん…キミを助けられなかった…」
「あの場合は仕方ないわ。私も注意が足りなかったのよ」
「索敵していたら、自分に注意なんて払えないよ…ボクはキミを助けられないのに、いつもキミに助けられてる…」
フランソワーズが首を傾げる
「夢の中でキミに励まされたよ…」
「…え?」
フランソワーズが驚く。
「私も今夢を見ていたわ…あなたに…ううん…何にもない」
急に顔を赤くして俯く。
「何?」
フランソワーズは下を向きながら小さい声を出す。
「『この身体は作りものかもしれないけれど…ボクがキミを想う気持ちは作りものなんかじゃない』…って…」

「え⁈」
ジョーが大きな声で驚いたので、 フランソワーズは顔を上げる

「…同じ事言われたよ…」

2人はしばらく顔を見合わせ、笑った。

 

 

2015.5.30~6.1

 

 

 

 

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