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feb.14 23:59

 

~girl side~
 

 

 


AM
 

 


日本のバレンタインは、女の人が男の人にチョコをあげるそうだ。

最近はお世話になっている人とか、女の子同士で贈りあったりするらしい。


 

 



AM10:30


バレエスクール。


スクールの生徒達が賑やかだ。
 


「先生は彼氏にチョコをあげるの?」

女子高生はそういう事しか聞いてこない。

「さぁ、どうでしょう」


「先生はどんなチョコを贈るのかとみんなと話していた所なの」
人の事はいいでしょ。

 


「先生はフランス人だから、きっと上質なチョコレートなんだろうなぁって。」



「フランス人だってアポロチョコも食べるわよ」



女子高生がえっ?という顔をして笑う。
 


「先生がアポロチョコってウケるんですけど~」


「さあさあ、休憩はおしまいよ!」
 


手を叩く。



 

 

 


~boy side~
 


AM
 


海外のバレンタインは、男の人が女の人に花を贈ったりするそうだ。
 


毎年今年こそ。と思うのだが、なかなか出来ず、フィリップに先を越されて、なし崩す。

 


 


AM10:30
 

 


コズミ博士の研究所

エントランスで受付の女の子に声をかけられる。

「ハッピーバレンタイン」

「あ、ありがとう」

 


「今日出勤ってわかっていましたよ」


受付嬢がニコッと笑う。

ジョーも思わず笑いかえす。




貰ったチョコを表裏交互に眺めながら、研究室のドアを開ける。


一応籍があるためデスクもある。


…ほとんど座る事はないが
 

 


そのデスクの上にダンボールが一つ


…下にもう一つ



先ほど貰ったチョコをポイと箱に入れる。


そばにいたフィリップが寄ってきた。



「滅多に来ない人にチョコ送ったって仕方ないよな」

「おっ、僻んでる?」



「まさか、僕はフランソワーズさんの一個を貰えたらそれで満足」



「ふーん、フランソワーズは日本人でないからチョコは送らないよ」



「そう思っているのは島村さんだけかもよ」
 


「へぇ、じゃあ早く家に帰らないとな」



「残念でした!この後研究室の打ち上げです!所長も参加するから逃げるのなしですよ!」

「車だよ」

「飲まなきゃいい」

 


はぁ。


また、花を買えないじゃないか。

 


打ち上げの前に…いや、車に入れていていいのだろうか?


早めに抜けて帰りに買って帰ろう。

 

~girl side~ PM



PM18:00

 



フランソワーズは冷蔵庫を開ける。
日本のバレンタインに合わせるのもどうかと思ったのだが、チョコケーキならいいかと作ってみた。

5個。

ダイジンにはスクールの帰りに持って行った。

博士は先程リビングに来たので渡した。

今晩の便で帰ってしまうアルベルトにはギリギリ間に合った。

アルベルトに会いに来たコズミ博士にも渡した。

残りは一つ。


また箱いっぱいにチョコレートを貰ってくるのよね。

その一つになるのも癪だったのかもしれない。


チャイムが鳴る。



帰ってきたのかと、笑顔でドアを開ける。



赤い薔薇の花束が目に飛び込んできた。



「ハッピーバレンタイン」

花束からにょきっと顔が出る。

 


「フィリップさん…」



「近くまで来たから…あ、そうだ、島村さんは今日所長のハンドルキーパーだから帰りが遅くなります。」

「え?フィリップさんは?」

 


「仕事が終わらなくて島村さんに頼んできたんです。いやぁなかなか終わらずに…」
といいつつ顔がニヤけている。


 


「そうなの…あ、ちょっと待って!」


 


フィリップが帰り、薔薇の花束を抱えながらため息をつく。
 


「チョコケーキなくなっちゃったな…」

 

 


 

 



~boy side~ PM


PM18:00


宴会が始まる。

ジョーは気になり、隣の研究員に声をかける。

「フィリップは?」

「あぁ、何か仕事が終わらないとかで研究室に残ったみたいだよ。

今日は所長のお世話係もいるから安心だと…あぁ、キミがいるからか!」
 

 


「え?」


…あのヤロウ逃げやがった。

 



「所長はなかなか帰らないからなぁ。お気の毒だな」


肩をポンと叩かれた。


みんな適当に酔ってきていた。

 

 


外の空気が吸いたくなり、店を出る。


近くに花屋はないかと通りを眺めていると、同じ研究室の女子研究員に声をかけられた。


「ハッピーバレンタイン」



にっこりと笑いながらチョコを差し出す。



「忙しい中作ったんだから、他の子のみたいに箱にポイしないでね」



見られてたか…。
 



「ありがとう、ねぇ、この辺に花屋ないかな?」
 

 


女子研究員は顔をハテナマークにしながら


「花…?また何で?」と呟いた。



かなり泥酔した所長を家まで送り届け、時計を見る。


 


もう店も軒並み閉まっていた。

結局花は買えなかった。



 

 

 




~そして…~

 



家の方向に車を走らせていた。

研究室に山積みになっているチョコは、車にはない。

先程女子研究員からもらったチョコが、ダッシュボードに突っ込んであった。

 



何故か気が焦っていた。


おそらくリビングが花だらけになっているのは想像出来た。

 


こんなのに踊らされている自分もどうかと思うが、今日のうちに…。
 


気持ちだけでも伝えたくなった。




 

 


もうすぐ日付が変わろうとしている。


今日中には帰って来ないのか。と席を立つ。


チョコケーキもなくなっちゃったし、いっそ日付が変われば何事もなくいられる様な気がした。

 


リビングは薔薇の香りでいっぱいだった。


国に帰っている仲間からも花が届いた。




何故だろう、普段は好きな花の香りにモヤっとした。


空気を入れ替えようと窓を開ける。


駐車場に車が滑り込んできたのが見えた。




車を駐車場に止める。


ダッシュボードを一瞥したが、そのまま車から降りた。

 



バタン、車のドアが閉まる音。


ピッと鍵をかけた音。

 


振り返ると…。

 


突然何かが飛んできた。


慌てて受け止めた。
 


「どうしたの?」
 


フランソワーズがジョーの首に腕を巻きつけ、体を着ける。
 


「どうしても…伝えたかったの」


ジョーは腕時計を見る。


「ギリギリだ、23時59分」


巻きつけた腕を解き、頬に手を当てキスをする。

 

 


「ハッピーバレンタイン」

 


~fin~

 

 

 

 

 

 

2017.2.13〜14

 

 

 


 

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