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GATE

仮装した人達の熱気は、通りを越えると急に冷める。


 

人通りの少ない路地にヒールの音がだけが響く。

気味が悪くなり振り返る。

誰もいない。


 

「遅くなっちゃった」

フランソワーズは肩にかけたショルダーバッグを掛け直す。

駅に行けばジョーが迎えに来ているはず。

 

ぼんやりした街の灯

先程までの雨が路面を濡らす。



 

「え?」

今まで誰もいなかったのに…


 

大通りの仮装した人?

頭と身体に包帯ぐるぐる…


 

え?

凄い力で腕を掴まれた


 

「何をするのっ!」

咄嗟に腕を払い、包帯ぐるぐる男を投げ飛ばす。

「あ、やっちゃった」

 

その瞬間

男は消えた

 

「…消えた…」

フランソワーズは只事でないと察した。

「危ない!逃げなきゃ!」

とにかくこの場を離れよう

ここで何かが起こっている!


 

走り去りたいのに

思うように走れない

焦って振り向いたら

壁に穴が空いている。

 

そこから次々と仮装したようなモンスター達がゆっくり出てきた。

「な…なんなの!!」

フランソワーズは、モンスターに囲まれて、金縛にあったように動けない。


 

「助けて…」


 

次に目を開けた時は、懐かしいような暖かいような感覚に包まれていた。

誰かの膝に寝かされていた。

恐る恐る顔を見る。
 

「ママン?」

「フランソワーズ!」

 

誰かが呼んでる。

待って、やっと会えたの

話したい事が沢山あるの

邪魔しないで…


 

「フランソワーズ‼︎目を覚ませ‼︎」

目は覚めてるわ

これは夢なんかじゃない

私を抱きしめている人は…

私の大切な…

ママン…



 

「ここから離れるんだ‼︎」

誰かに腕を引っ張られ、暖かい世界から急に冷たい雨上がりの路地に引き戻された。


 


 

「早く‼︎」



 

目を開けると、そこには殺気立ったジョーの姿。



 

「ジョー?何で?」

「キミがSOS送ったんじゃないか」

「SOS?」

「助けてって…」


 

「あ!」


 

フランソワーズは我に返り、穴があいていた壁に向かう。


 

そこには何もなかった。

「ここに穴が…」



 

「キミが見えない何かと対峙していたのはわかったから、危険だとこの場を去ろうとした」


 

「ジョーには?」

「何も見えなかったよ」


 

フランソワーズは、その場に崩れる。

「大丈夫か?」

ジョーがフランソワーズを抱きとめる。

「母が…ママンが私の前に現れたの…ずっと会いたかった。もう…死んでいるのに」



 

ジョーは立ち上がり、離れた通りの賑やかな仮装行列を眺める。
 

「ハロウィンは、死者が戻ってくるって地域もあるらしい、でも色々な霊が戻って来るから悪霊なども一緒に来るらしい。だから悪霊を追い払う意味でもお化けの仮装などをしていたという説もあるな…」
 

フランソワーズは、力なく起き上がる。
 

「今のは…幻覚だったのかしら…」

「わからない…キミの願望と霊界の扉がリンクしたのかも知れない」


 


 

フランソワーズは、両手に残った母親の温もりを抱きしめる。

「帰ろうか」


 

2人の背後では、賑やかな仮装行列が続いていた。

 

 

 

2017.10.31

 

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