
線香花火
1
ある夏の日
まだ全員の関係もぎこちなく、よそよそしい頃。
ジェットが買ってきた大量の花火を海岸で上げようという事になった。
思った以上に盛り上がった。
全員の距離も少し縮まったようだった。
「毎年この日に集まって、みんなで花火しよーぜ!」
まず約束を守れなくなったのは言い出したジェットだった。
毎年集まれる人数が減っていった。
「今年は2人だけか」
ジョーが2人分の花火を手に帰宅した。
「それだけみんな自分の生活が出来ているって事じゃない?」
フランソワーズは笑顔で言うが、寂しそうだった。
打ち上げ花火も上げなくなり、2人静かな手持ち花火。
始めは勢いがいいけれど、だんだん弱くなる。そして消える
辺りは闇に包まれた。
「最後はこれ」
線香花火をフランソワーズの手に。
パチパチ弾けたと思うと、大きな玉になり、玉が落ちる。
「人生みたいだよね」
「私たちは今どの辺かしら?」
「まだパチパチ弾けていたいなぁ」
笑いながら火をつける。
その翌年ついに1人になった。
2
フランソワーズは線香花火だけを用意した。
1人の花火は賑やかな物より静かな物にしたかった。
花火…という気分でもなかったが、今日はみんなで決めた1年に1度の花火の日。
1人になってしまってもこの日にしないと、もう2度とみんなで花火が出来ないような気がした。
線香花火に火をつける。
パチパチと葡萄の房のような形が続き、大きな玉になり落ちる。
「人生みたいだよね」
彼の去年の言葉が蘇る。
「来年もやろうね」
去年花火の後始末しながら彼が言った。
「…ウソつき」
重傷で意識不明
もしかしたら…このまま
博士の口から出た非情な言葉を信じる事が出来ず、気がついたら線香花火を持ってここにいた。
「…こんな事している場合じゃないのに…」
俯いた顔から涙が流れた。
「花火…終わっちゃった?」
「‼︎」
聞きなれた声に驚き顔を上げる。
「…ジョー…あなた…どうして⁈」
幻覚でも幻聴でもない。
目の前には重傷で意識不明のはずだったジョーが笑顔で立っている。
手に花火をたくさん持って。
「…大丈夫なの?」
ここに来る前に意識なく、色んなコードに繋がれた彼の姿を見たばかりだったから、夢としか思えず、頬をつねる
「痛い…」
「今日は花火の日でしょ?約束したじゃない、寝てなんかいられない」
フランソワーズは手に持っていた消えた線香花火を投げ出すと、ジョーに抱きついた。
いきなりフランソワーズが突進してきたので、支えきれずジョーが尻もちをつく。
ジョーの手にあった花火も吹っ飛んだ。
「ちょ…ちょっと!」
「よかった…死んじゃうんじゃないかと思ってた」
フランソワーズはジョーの胸に顔を埋める。
「心配かけたね…」
ジョーはフランソワーズの髪を撫で、そっと抱きしめる。
フランソワーズが顔を上げる
2人目を閉じる。
「オイオイ、そういうのは別の場所でやってくれ」
「「‼︎」」
ジェットが持ちきれないほどの花火を抱え歩いてきた。
「ジェット!」
「ジョーが死にそうだって連絡あって慌てて来たが、ピンピンしてるじゃねーか」
「先ほどまで死にそうでした」
ジョーは立ち上がり、尻の砂を払う。
「花火の日…だよな、フランソワーズお前線香花火してたのかよ?暗れーなぁ」
「1人だったから線香花火で充分よ」
フランソワーズも立ち上がり、砂を払う。
「おぉぃ!まだ沢山あるよ!」
「‼︎」
ピュンマを先頭に、みんなが花火を手に走ってくる。
「…みんな」
「ジョー、大丈夫?」
みんながジョーを囲む
ジョーを心配して駆けつけたらしい。
「ま、いいじゃん、ジョーも生き返った事だし、花火しよーぜ!」
ジェットが打ち上げ花火を海に向ける。
年に1度の花火の日。
全員の距離は更に縮まった。
2015.8.18~19