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​ココロノキョリ

 

 

 

 

 

 

 

何もない日々…

それはとても幸せで安らげる…はずなのに。

一緒にパリに行ってくれてから、私の彼に対する気持ちは少しづつ変わっていった。


私は彼に近づこうとしていたはず
でも、彼はだんだん遠くに行くようだった。



いつも近くにいるのに
遠くに感じる。

そう、意図的に距離を取っている。


昔の私の様に…

でもあの頃は、自分に自信がなくて、あなたに嫌われたくなくて…

…もしかして…
あなたもそうなの?


テラスで星を見ているジョーを見つける。

前は気軽に声をかける事が出来たのに
最近はそこに踏み入ってはいけないような

目には見えないけれど
壁があるような…


フランソワーズは大きく深呼吸をすると、その見えない壁を越えようとテラスに足を踏み入れる。




「まだ寒いでしょ?」

後ろから声をかけるとジョーはゆっくり振り返る。

その表情に気持ちを読み取る事が出来ない。

…心の声も聞こえたらいいのに…

そうしたらもっと傷つく事になりそうだけれど…


「でも、冬の寒さではなくなってきたわよね。桜はいつ頃咲くのかしら?」

「まだでしょ」

話を展開させる気は無いらしい。



あの時…一緒にパリに行ってくれてから、2人の距離はずっと近くなったはず。
あの時の彼は本当の彼だった。

それから何があったのかよくわからない。

いつからか彼は私に対してそっけない態度をとるようになった。

特に2人きりになる事を避けているようだった。

他に好きな人が出来たのかしら…


そう思った途端、フランソワーズの胸がぎゅっとした。

彼とは…
同じ運命を背負った仲間

それ以上では無いのかもしれない。

パリでの彼の優しさは

私の勘違いだったのかもしれない。



フランソワーズは、それ以上言葉を出さずに、その場を離れる。

背中でそれを感じたジョーはため息をついた。

キミを嫌っているわけでは無い。



自分の気持ちに気づいてしまったから、この想いを封印しなければならないから



キミとは住む世界が違いすぎる。





パリに一緒に行った時に、キミへの気持ちを確信した。

キミの気持ちも…だ。



でもそれではきっとキミが



不幸になる。





パリから帰ってきてからしばらくして、フランソワーズの兄のジャンから連絡が来た。



「妹をよろしくお願いします」



いいのだろうか?こんな得体の知れない男のそばに置いて…





その気持ちが日に日に黒いシミのように広がって行った。





彼女の無垢に触れるたび

彼女の笑顔を見るたび



その黒いシミがもう消せないほど



自分の心の中に広がっていた。





彼女には自分よりもっとふさわしい男がいる。





一人の人間として幸せに暮らす事だって彼女なら不可能では無い。





自分には

それは無理だ。





ただ同じ運命を背負ったから一緒にいるだけで

彼女だって今近くにいるのが自分だから頼っているだけなんだ。



それはきっと



恋とかでは無い。





彼女を守りたい気持ちは前と変わらない。

でもそれは仲間としての感情にとどめておかなければならない。





別の気持ちを持ってしまったら…

彼女を不幸にする。





 

「どうしたの?元気ないけど」

久しぶりに帰ってきたピュンマは、リビングで本を読んでいるフランソワーズに声をかける。

「別に・・・何もないけど」

勘のいいピュンマにはすぐ気づかれてしまう。

それでも何もない素振りをする。

「何か悩みがあるんじゃない?」

気にしないで欲しいのに、今日のピュンマはなかなか引き下がらない。

降参…とばかりにフランソワーズは本を閉じる。

「最近ジョーの様子がおかしいの」

「え?」
 

「避けられているっていうか…ピュンマは感じない?」

「いや、僕にはいつもと変わらないけどれど…」
 

ピュンマは少し考えると


 

「あ、そういえば、ジョーがここを出るって話していたな」
 

「え…」

…聞いていない


 

「どうして?」

「どうしてだろうね、東京に友達がいるから、友達に世話してもらうらしいよ」
 

「ここで暮らせるのに、何故?」

 


 

…やっぱり

ジョーにとって大切な人ができたんだ。

だから私に対して素っ気なく

家を出ると言っている。

私をパリに帰す為に努力してくれた彼が

パリで私の為にボディガードしてくれた彼が


 

同じ気持ちでいてくれると思ったのに

 


 

私だけだったんだ

黙ってしまったフランソワーズをピュンマがじっと見ていた。

東京の雑踏に安心する時がある。

すれ違う人はみな自分には無関心だ。

誰にも気づかれず、都会の隅に息を潜める…
そんな暮らしが自分には一番似合っているのだと思う。

自分の為の場所、温かいご飯なんて贅沢だったんだ。

 

 


東京で昔の仲間達に会う。

家庭に恵まれず、若い頃は色々あった連中だが、それぞれが楽ではないが、自分の食う分くらいは稼げている。

「いいよな、ジョーは、どんなコネ使って研究所なんかに勤められたんだ?」



「その上住み込みなんてさ、家賃いらないじゃないか!それなのに何でわざわざ家を出るんだ?」



昔の仲間達に、東京で暮らしたいと話をしていた。



研究所からは遠くなる、家賃もかかる。
仲間達には理解が出来ないだろう。

 


「居心地が悪くてさ」



彼女の側にはいたい、彼女を守りたい。
そう思う事自体が間違いなんじゃないかと思い始めると、側にいるのが辛くなってきた。



自分はどう頑張っても彼女に相応しい男にはなれない。
パリで出会った「過去」の友人達は、自分にはあまりに不釣り合いで、何度もいたたまれなくなった。

彼女はそんな世界で生きてきた。
自分は…違う。

 


朝までいようと思ったが、最終電車に間に合ったので、家に帰る。

夜中を過ぎていたのに、家には明かりが灯っていた。



出迎えたのはピュンマだった。
血相を変えていた。

 


「大変だ!フランソワーズがいなくなった!」


「な…に⁈」



 

「いつからいないんだ?」

「ボクも帰りが遅くなったんだけど、辺りは暗くなっていた。
帰って来ない時間ではなかったから」

「出かけた時間はわからない?」

「わからない…」

ジョーは家に入ると真っ先に地下に向かう。

その後をピュンマが追う。

誰もいない地下室に明かりが灯る。

ひんやりとした張り詰めた空気が、ドアの開閉で流れ出す。

「家出?それとも…」

「ジョーは今朝彼女に会った?」

「いや、見ていない…か…な」

ピュンマがフーッと息を吐く。

「フランソワーズが元気なかった事も知らない?」

「なに?」

「同じ屋根の下に暮らしていてそれはないよな、みんなもキミがいるから安心していられたのに…

あ、家出ることフランソワーズに話してなかったよね?」

「え…そうだっけ?」


「やっぱりな…彼女、キミの変化に気づいていたんだよ。キミに嫌われたかと思っていたようだ。」

思われても…仕方ないか。

ジョーは口に出さずに心で呟く。

「キミにここにいろとは言わない。キミにだってやりたい事があるだろう。

でもフランソワーズはまだ国に帰れない。ここにいるしかなかった。
キミがここにいたくないなら、僕らが交代で帰ってきてフランソワーズを守るよ。」

ピュンマが言葉を止めた。

「これがただの家出だったらね」

普段は温厚なピュンマが、避難するように冷たい視線をジョーに投げる。

ジョーは返す言葉がなく、黙って俯くだけだった。

 

「とりあえず日が昇ったら、心当たりを探してみよう。誘拐だとしたら、何らかのコンタクトがあるはずだから」


ピュンマは呑気にあくびをする。

「そんな事言っていられないだろう?彼女に何かあったら…」

ジョーは呑気なピュンマに苛立っていた。

「今動いたって日が昇ってから動いたって同じだよ、とりあえず仮眠とっておこう。」

ピュンマが席を立ち、自室へ行った。



ジョーはその場から動けなかった。


ピュンマは冷静すぎるんだ。
何かあったらどうするんだ。
取り返しのつかない事になったら…


側にいながら、自分のいっときの感情に流されて…



掴みかけていた彼女の手をあっさり離してしまった。
そんな気持ちだけが心の中を占めていた。




子供の頃から人に優しくされた事などなかった。


無償の優しさなどこの世に存在しないのだと思い知らされた。

誰にも頼らず自分の力で生きていくしかなかった。



だから


フランソワーズの優しさが怖かった。


きっといつか


また

あの頃のように

全てなくなってしまうんだと

その怖さから

自分からその手を離してしまった。




ジョーは両手で顔を覆う。

ただ後悔だけが彼を覆い尽くす。



 

朝が来た。


何度か警察に連絡しようと思った。

もし、誘拐なら…

彼女の「正体」を知らない者の誘拐ならそれ程恐れる事はない。

でももし…



「逃げてきた」組織が関係しているのなら…
警察に連絡した所で何にもならない事くらいわかっていた。



この国に彼女がいる事も、「この世界」では通用するのか?

 


色々考えれば考える程、自分達はまだ危ない橋の上でグラグラしている状態なのだと思う。



表向き何も起こらず、フランソワーズ以外は国に戻っていたから、錯覚を起こしていたのかもしれない。

 



「あれ?ずっとここにいたんだ」
ぐっすり寝ましたよと言わんばかりにスッキリした顔のピュンマが入ってきた。

 


ピュンマの冷静さに少しムッとしながらも
「何にもコンタクトはなかった」
とぶっきらぼうに言う。



「家出…だとしたら、思い当たる場所はあるかい?」



ピュンマの問いにジョーはしばらく考える。

「思い当たると言えば…」


ジョーが研究所を飛び出した。



ピュンマもその後に続いた。



 

玄関の前に立つ。

ここしか思い当たる場所はない。

深呼吸してチャイムを鳴らす。

しばらくしてドアから顔を出したのは



フランソワーズだった。



「ジョー…」


フランソワーズの姿を見て、安堵からか膝が崩れそうになったが、なんとか立て直す。


「キミのいる心当たりはコズミ博士の家しかなかった。
もしここにいなかったら…」


「…ごめんなさい、心配かけて」

「何故黙って家を開けたりしたんだ?」

フランソワーズは俯いて黙ったままだった。

ジョーの後ろにいたピュンマがポンとジョーの肩を叩く。

「彼女を責めるなよ、今回の事は全部ボクが仕掛けた事なんだから」

「は?」

ジョーが振り返ると、ピュンマは笑いながらジョーに並ぶ。


「フランソワーズがジョーに嫌われているんじゃないかと不安になっていた。じゃあジョーの気持ちがわかれば安心するんだね?」


ジョーはピクリとも動かない。



「だからフランソワーズにコズミ博士の家に行ってもらったんだよ。

フランソワーズがいなくなった事で、キミがどういう反応を示すか…ね。」

 

 


次の瞬間

 



ピュンマは派手に飛ばされ



走っていくジョーの後ろ姿

手で口を覆い絶句したフランソワーズ

殴られて、頰を押さえながら、体勢を立て直したピュンマは、フランソワーズに笑顔でこう言った。

 

 


「これで心配は吹っ飛んだでしょ?」

随分遠くまで走った気がしたが、立ち止まってみるとそんなに走っていなかった。



防波堤に座り、朝の海を見る。


春らしさが感じられる様になった海には、朝の散歩かゆったりと歩いている人が数人。


ジョーは深呼吸をする。

この半日あまりで事が急速に変化した。




彼女から逃げていた自分

彼女がいなくなり本当の気持ちに気づいた自分

彼女の姿を見て安心した自分

ピュンマにカッとした…自分

 

 


自分は一体どうしたいのか
何をして欲しいのか
何を…求めているのか

 



孤独なら人恋しい
干渉されるのは嫌だ
優しくされるのは苦手だ 

 



今までの優しさは、儚かった。
手を伸ばすと消えてしまった。



手を伸ばす事を恐れていた。

なぜなら

彼女の事が…


 

 



「朝の散歩かね?」

声をかけられハッと振り返る。



コズミ博士が笑っていた。

 


「博士…すみません、フランソワーズがお世話になりました。」

 



「見つかってしまったかの」
コズミ博士が笑う。

 


「全部僕の所為です。」




「キミにとって…幸せって何だね?」

 



コズミ博士がよっこらしょと声を出し、ジョーの隣に腰掛けた。

 



博士の手には最近海岸沿いにオープンしたばかりのベーカリーの袋。
袋からはフランスパンが覗いていた。

 


きっとフランソワーズに食べさせたいから。

 



「幸せ…そんな事生まれてこの方考えた事なんてないですよ」


ちらっと隣のコズミ博士を見る。


いつもの穏やかな表情
何を考えているかなんて窺い知れない。

 



「もう考えてもいい時期なのではないかね?」



「え?」

 


「過去は過去、もうキミを無意味に傷つける人もいないだろう」

 


「…そうでしょうか…」



「あの子はいつもキミをまっすぐに嘘偽りなく接してくれている…キミがまっすぐに接してくれないから、あの子は不安になる」

 


「彼女…フランソワーズは博士に何と?」

 


「何も言わんよ、キミが家を出る事を聞かされていなかった事にとても心を痛めているようだとピュンマ君から聞いた位じゃ」

 


「最近あまり話す機会がなくて…」

 



「あの子がいなくなった時、キミは何を考えたんだね?」



「まだ安全じゃないんだ…と」



「東京に出る事を誰も咎めはしない、キミにやりたい事があるのなら、行けばいい。

でもただ何となくとか、あの子から逃げたいだけなら…きちんとあの子と向き合ってからでもいいのではないのかね?」
 

 


ジョーは無言で海を見る。

「それならあの子も納得するだろう」



ジョーがふーっと息を吐く。



「ギルモア博士もコズミ博士もフランソワーズには甘いから」

 


ジョーの言葉にコズミ博士がきょとんとする。

 



「まだボディーガードが必要ならここにいますよ。」

ジョーがニコッと笑う。

 


博士が手の袋を思い出す。

「そこで買ってきたベーカリーのパンがある、キミも一緒に食べるかね?」

「フランソワーズに買ったんでしょ?足りなくなるからいいですよ、家に戻ります。」

 

 

 


ジョーは立ち上がると、博士に手を貸す。



博士が立ち上がると手を離し



「ありがとうございました」
と言いながら一礼をして、走り去る。

 



その後ろ姿を見ていたコズミ博士
「素直ないい子なんじゃがなぁ…」

 


ぼそりと呟いた。

 

10

「ここにいたんだ」

 


お昼過ぎの家のテラスには、冬の終わりの弱い日差し。

 




ジョーはテラスに横になり、ウトウトしていた。

昨夜は寝ていない。

 

 


そこにピュンマが現れた。

身体を起こす。

 



「あ、寝てた?」

ピュンマはジョーの隣に腰を下ろす。

朝方殴り、殴られた事が嘘のように穏やかな時間。





「ピュンマ…ごめん」



何事もなく接してきたピュンマに最初に謝ったのはジョーだった。



「え?何で?悪いのはぼくの方さ、いっくらキミの本心が知りたいと思っても、あれはダメだよね?」
 

 


いつもは的確な指示を出し、完璧で失敗などないピュンマにしては珍しい不完全な計画だったと、ジョーは心の中で笑う。
 

 

 


「キミも博士達と同じだよ」

「え?」

「フランソワーズには甘いんだよ」



ピュンマがジョーを見ると、ジョーは僅かに口角を上げていた。

 

 



「そりゃあね、妹みたいなものですから…じゃあさ、ジョー、キミはどうなのさ」



いつもならこの辺りではぐらかされるから、ピュンマも先の言葉には期待していなかった。

もっともここで彼が本心を語ったとしたら、フランソワーズ行方不明の茶番劇だってやる必要もなかっただろう。

 

 


「怖かったんだ」

「え?」


はぐらかされるどころか、思ってもいない答えにピュンマは首を傾げる。

 




「彼女の優しさが…怖かったんだ」

「怖い?」

 

 


「今までの自分には甘い言葉をかけてくる人も、優しく接してくれる人も沢山いた。でもそれは本当の優しさではなかった…信じていたのに裏切られた時の喪失感が…今でも忘れられないんだ…だから…」

 

 


しばらくの沈黙の後ピュンマが口を開く。



「うん、わかるな、その気持ち」

ピュンマの言葉にジョーは顔を上げる。



「ぼくも昔はそうだった。優しさなんて偽りだと思っていた。貧しい国に手を差し伸べてくる人々はみな見返りを求め、また国を貧しくして去っていく…綺麗事ばかり並べたてて…」



「ピュンマ…」

 



「でも悪いやつばかりじゃなかった。少なくともこの家に集まってくる奴等は、みんな偽りはないと思っている」

 


「…うん」

 


「過去が今を苦しめる事もあるかも知れないけれど、この先裏切られる事もまだあるかも知れないけれど、

ここには、この場所にはそんな悲しいことはないと思う。もうみんな充分苦しんだんだから」

 


「…そうだね」

 



笑いあう2人の間に流れた風は穏やかだった。



 

11

「そろそろ選手交代かな」


ピュンマが後ろを指差し立ち上がる。

 

 



「耳が聞こえすぎるのも何だね」


ピュンマの様子からも今の話をフランソワーズは全部聞いていた事を知る。

 

 



「とにかく彼女にちゃんと自分の気持ちを話す事だね、そうしないとこの家の住人全員敵に回す事になる」

 


ピュンマは白い歯を見せ
「みんな彼女に甘いからさ」


と笑う。
 

 

 


ピュンマはテラスを出て、ジョーに聞こえるようにフランソワーズに「お待たせしました」と告げるとその場を離れた。
 

 


フランソワーズがテラスに出る。
 


「ごめんなさい。ピュンマは何も悪くないの」



ジョーの後ろに立ち止まるフランソワーズに、ジョーは座ったまま、身体を後ろにひねりフランソワーズを見る。

 


「わかっているよ」



ジョーはフランソワーズに座るように促す。

 



フランソワーズはためらいながら、テラスに直接腰を下ろす。

 


2人並んで海をみる。

 



久しぶりの近い距離にフランソワーズは落ちつかない。



「あなたに…避けられていると思っていたの…私がそばにいたら迷惑なのかと」




ジョーはフランソワーズを見ることなく海を見ていた。




「優しくされるのが嫌だったら…冷たくするから…だから…ここにいて欲しい」

 



ジョーはくすっと笑う。

 


「キミは冷たくなんてできないでしょ?いいよ、もうしばらくは出ていかない。またキミが突然いなくなったらすぐに探せなくなるからさ」

 


「ジョー…」

 


照れ隠しなのはわかっている。
コズミ博士の家を訪ねてきた時の彼の顔を思い出す。

 



心配してくれていた。
嫌っているとしたら…あんな顔はしない。

 




フランソワーズは深呼吸をする。
心臓の音が高鳴るのが自分でもわかる。

 



ピュンマとジョーの話を盗み聞きするつもりはなかったが、朝の2人の様子から気になってつい聞いてしまった。

 

 


彼の本心が。
自分を避けていた理由が。



もう苦しまなくてもいい
私はあなたを悲しませない。




「ジョー、私…あなたの事が…」

 

 

 


次の瞬間



トン…



「え?」



ジョーの髪が触れ、肩に重みを感じた。



「え??」



彼の匂いとお日様の匂い。



フランソワーズの肩を借り眠っているジョー。



安心しきった寝顔に微笑むと、肩を貸したままそのままで海を見た。

 



春はもうそこまできていた。

 

 


〜おしまい〜
 

2017.2.24〜3.29

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