
Heart voice
遮るものがない海辺の家
聞こえるのはゴーゴーという風の音と、荒ぶる波の音
寝ていたのに目がさめる。
時計を見ると
夜中の2時
「嫌な時間に目が覚めちゃった」
布団をかぶり寝ようと思っても、沢山の音の洪水で眠れない。
寝るのを諦めて窓から外を見る。
雨と風とが家の窓を打ち付ける
海は深い闇の中から飲み込みそうに口を開けているよう
「怖い…」
思わず心の中で叫んだ。
…つもりだった。
「どうしたの?何かあった?」
「え?」
突然脳内に響いた「彼」の声。
「今、怖いって…聞こえたから」
「え、あ、ごめんなさい、大丈夫だから」
「大丈夫なものか、こんな時間に、今行くから」
「え?待って…その」
「何?」
「…いえ…何も…」
しばらくして部屋をノックする音。
「大丈夫?」
脳内でない肉声の彼の声
本当に心配している。
今が何時かも
この家に今2人きりって事も
多分彼は気づいていない。
「音が聞こえすぎるから…海の音が怖く感じてしまって」
彼は部屋に入り、窓の外を見る
「すごい嵐だね、朝になったら沢山の漂流物で大変な事になっていそうだ」
「あなたには聞こえない?海の音が」
「波の音と風の音と雨の音…なら聞こえるよ…あと」
「あと?」
「キミの心の声…かな?」
「え?」
フランソワーズが並んで窓を見ていたジョーの方に顔を向けると、ニコっと笑っている。
「嵐が止むまでここにいていい?」
今が何時かも
この家に今2人きりという事も。
そして
フランソワーズの気持ちまで。
全部彼は気づいていた。
「ズルいわ」
フランソワーズがポツリと言う。
返事が違うことに首を傾げるジョーに
「もう大丈夫だから、部屋に戻っていいわ」
強めに言う。
「そう、じゃおやすみ」
いとも簡単に引き下がるジョーに、フランソワーズはもう一度
「ズルいわ」
と言う。
「ズルいって何なのさ?戻ってもいいんだろ?」
「私の心の声が聞こえるんでしょ?じゃあ私の本心だってわかっているくせに…」
「わかってるよ」
「私は…あなたの心の声が聞こえない!
あなたが私をどう思っているのかわからない!色んな音が聞こえても、大事な声が聞こえないの!」
「なんだ、そんな事か」
ジョーは窓際のフランソワーズの側に戻る。
そっとフランソワーズの肩を抱く。
「多分いっぱい叫びすぎて聞き取りにくいのかもしれないね」
「え?」
「キミへの想い」
ギュッと抱いた力の強さに驚いて顔を上げる。
「ちゃんと聞こえるように大人しくします」
そういいながら、顔を上げたフランソワーズにキスをした。
2017.7.1