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船が沈む前に

船が沈む

 



全員退避したと連絡が来た。
ジョーも船を脱出しようと走っていた。

「え?」

避難した筈のフランソワーズが船に戻っている。
避難艇とは反対方向を走っている。

 

 


「フランソワーズ!どうしたんだ⁈時間がないぞ!」

ジョーは方向を変え、フランソワーズの後を追う。

「どうしたんだ?早くしないと船が沈む!」
ジョーの呼びかけに答える事なく、どこかに向かっているフランソワーズ。

「フランソワーズ‼︎」
ジョーが怒鳴ると同時に、フランソワーズは自室に入る。

ジョーも後に続く

 

 


フランソワーズは部屋の棚からひとつの置物を取ると、部屋を出た。

「…それは…」
ジョーと並んで走りながら、フランソワーズがようやく声を出す。

「あなたから預かった大切なものだから」
手には木彫りのウサギの置物

「そんな…そんな物よりキミの命の方が大事だろ!」

 



ジョーは怒っている。
フランソワーズはそんなジョーを気にはしていない様子だった。

 


「だってあなたの友達から貰った大切な物で、私はあなたから預かったの。私が無くしてしまったら、あなたにもその友達にも申し訳ないわ」
 

 


この船で初めて2人きりで話をした時に、彼が持っていたウサギの置物。

可愛いと私が言ったら、預かっていてくれる?と私に託してくれたウサギの置物。

あなたと友達との大切な思い出であると同時に、私にとっても初めてのあなたとの思い出。



大切な…。



目の前が爆発して、2人は飛ばされる。




ジョーは起き上がると、まだ倒れているフランソワーズの元に駆け寄る。

 


「大丈夫か?」
「…ええ、大丈夫よ」
フランソワーズは起き上がる。

「そのウサギ、服の中に入れて」

「え?」
ジョーの言っている意味がわからず、首を傾げていると



「時間がない!早く!」


ジョーの剣幕に、慌てて服の中にウサギを入れる。


「よいしょっ」


「え!?ちょっと、ジョー!?」

 


軽々とフランソワーズをお姫様抱っこしたジョーがフランソワーズに言う。

「しっかり捕まってて」



ジョーに抱き抱えられて真っ赤になりなるフランソワーズ。


 


今はそんな状況ではないと思いながらひとつ頷き、2人は一瞬にして消えた。

2016.2.16

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