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キミじゃない
彼女は僕が学校を休むと、心配して顔を出す。
僕は何の為に学校に行くのかわからなくなっていた。
意味のない事だと薄々気づいていた。
彼女はそれでも笑顔でやってきて、授業のノートと食材を買ってくる。
ご飯は母親が作ってくれるよ。
そう言いかけた時ふと疑問に思う。
僕に母親なんていたっけ?
彼女はそんな僕にいつも言う
「あなたが心配なの」
その笑顔に偽りはない。
懐かしい感じもした。
でも…
違和感だけが心を支配する。
ある天気のいい休日、彼女が遊園地に行かないかと誘ってきた。
学校の誰かに見られたらどうするんだよ?と思ったが、そんな事もどうでもよくなってきた。
そもそも僕は学校など通っていないのでは?
彼女と童心に返ったように楽しんだ。
あたりはだんだん暗くなってきた。
そろそろ彼女を家に帰さないと。
え?この子の家って…何処だっけ?
メリーゴーランドの前、照明がついた。
幻想的な風景にふと頭の隅にあった思い出が蘇った。
「キミ…」
彼女は振り返る。
「なあに、島村くん」
「キミ…じゃない」
彼女の顔色が変わった。
「キミ…じゃない!」
彼女は突然叫んだ。
「だめ!これ以上言ったら、これ以上思い出したら!」
「フランソワーズ!!」
僕の口から出た言葉に、彼女はとても寂しそうな顔をした。
そして次の瞬間
彼女も
周りの景色も
全て消えていた。
2016・11・29
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