
ツリバシコウカ
山々は紅く染まり、山道も落葉の絨毯となっている。
秋の紅葉が見事な山にかかる赤い吊り橋。
山々の紅葉に負けない赤い橋は、景色に馴染んでいた。
足元は板貼りだが、隙間から下の景色が見える。
下は清流が流れている。
大人2人が渡るだけでも橋はきしみ揺れている。
前を歩くカップルの女性が「こわ~い」と男性にしがみつく。
フランソワーズもジョーに腕を絡める。
「こわ~い」
「怖くなんかないくせに」
ジョーが笑う。
「なによ、雰囲気ってものがあるでしょ?」
フランソワーズは膨れる。
「キミはここから飛び降りろ、と言ったら何のためらいもなく降りちゃうもの」
「まぁ!」
フランソワーズは絡めた腕を解き、1人で橋を渡り始める。
「冗談だって、怒るなよ」
ジョーが後を追う。
前のカップルが橋を渡り終えたのを確認すると、ジョーは立ち止まる。
無防備に橋の真ん中を歩いているフランソワーズに、わざと橋を揺らす。
「きゃっ」
突然激しく橋が揺れたので、一瞬バランスを崩しかける。
「もう、何するのよ!」
「びっくりした?」
ジョーがフランソワーズに駆け寄ると、イタズラっ子のように笑う。
フランソワーズは急に真顔になり
「今、気がついたわ、あなたへの気持ちは吊り橋効果だったのかもしれないわ!」
「は?何言ってんのさ」
「危険な目にあって、近くにいたあなたがとっても素敵に見えたのね、今揺られてわかったわ。それはただの吊り橋効果だったって」
フランソワーズはジョーに背中を向けて歩き出す。
「おい、待てよ!何言ってるんだよ」
いきなり真面目に答えられ、動揺するジョー。
フランソワーズは構わず歩き続ける。
橋を渡り終えると、くるっと振り返り
「冗談よ」
と笑う。
「何だよ、驚かすなよ」
「あなたがさっきから意地悪ばかりするから仕返しよ」
「すみませんでした。もう意地悪しません」
「仕方ないわね、許してあげるわ」
フランソワーズはそういうと、ジョーに腕を絡める。
「本気かと思ったよ…」
ジョーはフランソワーズの腕をそっと解き、手を繋ぐ。
山々は紅く染まり、山道も落葉の絨毯となっている。
2人はしばらく紅葉の景色を楽しんだ。
~おしまい~
2015.11.13