
spring in coming
バイクの後ろに乗っていた。
ジェットの愛車BMW。
ジェットの腰に手を回す。
しがみついていないと振り落とされそうだった。
「しっかりつかまってろよ」
通信で話すなんてズルい。
30分位走り、海岸道路で停車した。
「ちょっと散歩するか」
ジェットがバイクを止める。
風は冬から春の匂いをさせていた。
季節が変わっているのさえ気づかなかった。
「お前がそんなシケた面してるから、起きてこねぇんだ。起きたくとも起きれないだろーが」
「そんな顔してた?」
「死人みてーだ」
「もう!ジェット‼︎」
手に持っていたヘルメットで、ジェットを叩く。
「やめろって‼︎」
フランソワーズは、ヘルメットを降ろす。
「春が来ているのに、気づかなかったわ」
「そうだな、それどころではなかったしな」
埃っぽいような、カラッとしたような、お日様の匂いのような…。
「長い冬が終わると春が来る」
「そうね…」
フランソワーズはジェットと向かいあう。
「ジェット」
「あん?」
「ありがとう」
ジェットの頬にキスをする。
「オイオイ、お目覚めのキスは取っておいた方がいいんじゃね〜の?」
「練習よ」
「練習台かよ」
「帰りましょ」
「その顔ならお目覚めのキスも大丈夫だな」
「叩くわよ…」
「その元気があれば大丈夫だ」
メディカルルームの扉を開ける。
眠っているジョーの側に腰掛ける。
「お寝坊さん、冬眠はもう終わりよ、春はそこまで来ているわ」
ジョーの瞼が動く。
「…フランソワーズ?」
「おはよう」
フランソワーズはジョーにお目覚めのキスをする。
「…春の匂いがしたよ」
フランソワーズはにっこり笑い
「早く元気になって、春を探しに行きましょ‼︎」と言う。
長い冬が終わり、春がやって来る…。
〜おしまい〜
2016.3.7