
star light night
1
七夕の夜。
流れ星が綺麗な空。
1年に一度だけ逢うことが許された2人を祝福するような…。
ひとつの案件を終え、明日パリに帰る。
今度いつここに来るかはわからない。
「戦い」がなければ集まることもない。
私がここに留まる理由もない。
急に抜け出したから、もう代役がきっちりこなしているんでしょうね…。
私が帰っても…居場所なんかないのに…。
空は綺麗なのに、星は綺麗なのに…。
「あれ、もう支度は済んだの?」
帰ると告げても引き止める事もなく、空港まで送るよ。と他のメンバーと同じ言葉を告げたジョー。
「持って帰るものもあまりないから」
そっけなく言葉を返す。
「今日は七夕だっけ?星が綺麗だね」
ジョーがフランソワーズと並ぶ。
目の前には漆黒の海。
波の音だけが規則正しく繰り返される。
「あ、流れ星!」
まるで子供のようにはしゃぐジョーを、黙って見つめる。
帰ると言っても寂しくなるとも言ってくれない。
今度いつ会えるかわからないのに…。
本当に私の事を…?
2
ひとつの事件が解決し、みんなそれぞれの場所に帰っていく。
毎日のように空港に送り、じゃあまた。あんまり再会を喜んじゃいけないんだよね?
今度は何もない時にゆっくり来てよ。
…と、何度も繰り返す。
1人また1人。
そしてついにフランソワーズから「帰る」という言葉を聞いた。
1番恐れていた言葉だった。
でも引き止める事は出来ない。
彼女だって彼女の生活がある。
「空港まで送るよ」
彼女は一瞬顔を曇らせた。
変な事言ったかな…。
人数がぐっと減って、静かになった家だけど、キミがいなくなるともっと寂しくなる。
もうしばらくは食べられないだろう手料理に、気の利いた事も言えずにいた。
もう休んだと思っていたのに、テラスでひとり星を眺めているフランソワーズに声をかけた。
「あれ、もう支度は済んだの?」
彼女は表情を変えることなく
「持って帰るものもあまりないから」
とだけ言うと、再び星を見る。
何となく機嫌が悪そうだが、ここから立ち去る気はしなかった。
残り少ない彼女との時間を共有したかったのかもしれない。
「今日は七夕だっけ?星が綺麗だね」
ジョーがフランソワーズと並ぶ。
目の前には漆黒の海。
波の音だけが規則正しく繰り返される。
暫くの沈黙。
スーッと星が流れた。
「あ、流れ星!」
わざとはしゃいでみたが、笑う様子もない。
こんな雰囲気で別れるの嫌だな。
ジョーは星から視線をフランソワーズに向ける。
3
「バレエの公演、もうすぐでしょ?スケジュール空けて観に行くよ」
ジョーの言葉に、フランソワーズは暫く黙っていた。
「…バレエの公演なんて出れる訳ないじゃない、代わりはいくらでもいるの。戻っても…居場所はないわ」
悔しそうに俯くフランソワーズ。
いつも上手くいきそうな時に集合をかけられ、最後まで悩んで、でもここに来てくれるフランソワーズ。
結果沢山の大切な物を失っている。
ジョーは俯いたフランソワーズから視線を空に向ける。
静止したような空間に、星だけが流れている。
ジョーが視線をフランソワーズに戻す。
「じゃあ、パリに帰る理由はない訳だ」
ジョーの突然の言葉に、フランソワーズは顔を上げる。
「ここにいればいいじゃないか」
「え…?」
ジョーは笑顔で言っている。
「…迷惑じゃ…ないの?」
「何故?迷惑なんてことはない。キミにはキミの生活があるから、帰ると言われても止めることは出来なかった。でも、帰る理由がないなら…」
ジョーがフランソワーズを抱き寄せる。
「ここにいて欲しい」
フランソワーズは溢れ出る涙を見られないよう、ジョーの胸に顔を埋めた。
フランソワーズが泣いているのを気づかないフリをして、優しく抱きしめる。
一つになった二人の影を、星だけが見ていた。
~おしまい~
2015.7.6〜7.8