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​ホワイトクリスマス

ジョーはパリにいた。



パリはクリスマスシーズンで賑わっていた。

そんな浮かれた街の様子など眼中になく、重い気持ちを引きずりながら歩いていた。

 



フランソワーズはバレエの公演中だった。
クリスマス公演はいつも以上に華やかな雰囲気だった。



「こんな身体」にされても尚、夢を叶えている彼女を尊敬していた。



華やかな舞台、中央で輝いている彼女を見てしまったら、自分はここにいてはいけないと思った。
 

 


何故ここにいるのだろう。

 



芯まで冷える夜の街。
空から白いものがチラチラと舞っている。



教会の鐘が鳴っている。

 



クリスマス…もう自分には関係ないものなのかもしれない。

 



ジョーはため息をつくと、その場を去ろうと歩き出す。

 

 



「ジョー!」

聞き慣れた…今1番聞きたかった声に呼び止められた。



「来てくれたの!嬉しいわ!観えたわよ、公演中に」
フランソワーズは白い息を吐きながら、ジョーに駆け寄る。
公演の成功と、ジョーに久しぶりに会えた喜びに満ち溢れていた。



ジョーはニコッと微笑むと
「ちょうどクリスマスシーズンに時間が取れたから、キミの公演を見たかったんだ。とてもよかったよ」

フランソワーズは向かい合ったジョーの手を握る。



「これから予定はあるの?一緒に食事でも…」
ジョーの顔が一瞬曇ったのをフランソワーズは見逃さなかった。



「ごめん、日本に帰らないと行けないんだ、また今度ゆっくり寄らせてもらうよ」



フランソワーズは握った手を離すと



「…迎えに来たのよね?」と静かに言う。

次の言葉を出せずにいるジョーに

「わかっていたのよ、最初から、公演中に貴方の姿を見つけてから」

ジョーはうつむくと
「ごめん」
と呟いた。



「わかったわ…でも」



フランソワーズはジョーの胸に顔をつける。



「少しだけ…このままでいさせて」



ジョーはフランソワーズの背中に手を回す。




白い雪が2人を包むように降り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015.12.23

 




 

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