Blue moon night
ここの所雨が続いた
久しぶりの晴れた日の夜
夏も終わり静かになった浜辺を歩くと
ぽっかりうかぶ青い月
フランソワーズはある事を思い出し、首を振る
月が青いと思い出す
まだお互いの思いに気づかない頃
ある案件で助けた女の子を連れて出かけて行ったあなたは
「月が青いからドライブに」
なんて呑気に言っていたわよね。
私はその言葉にムカっとしたわ。
こんな時にドライブ?
いや…違う
多分あの時
隣で微笑んでいた女の子が嬉しそうな表情を浮かべていたから
私が彼とドライブに行けるのは
偵察の時だけだったから
あれからどれくらい時間が経ったのだろう
あの時のあの子は彼に抱かれたまま息を引き取った
彼は
あの子の事を同情という感情で見ていた
私には?
彼の事を好きなんだと自覚した時には
もう彼はいなかった。
生還を願った
このまま終わりたくなかった
たとえ彼が私に対しても同情という感情しか抱いていないとしても
一緒に出かけるのが偵察の時だけでも
多くは望まない
ただ
彼が無事で帰ってきてくれたら…。
神様はいるのだと確信した
彼が無事とは言い難いが
とにかく生きて帰ってきた
しばらくは意識がなく
このまま目覚めないかもしれないと悪い予感がよぎった翌日
目を覚ました彼は
「還ってきたんだ…」と声に出した。
あれからどれくらい時間が経ったのだろう
そんな事を思い巡らしていたら、後ろにその「彼」がいたのに気づかなかった。
「何考えているの?」
突然声をかけられ驚く
「!!」
「何深刻な顔して考え込んでるのさ」
彼は隣に座る
「今日は月が綺麗だから…」
「ふうん」
昔…月が青いからってドライブに行っていたあなたじゃないみたい。
…あれも後から思えば偵察だったんだけど…。
「昔の事思い出していたのよ…あなたが命をかけて戦った時の事を」
「どんな事思い出したの?」
「月が青いからドライブに行った事とか…」
「え?いつ?キミと行ったっけ?」
呆れた…
この人、覚えていないわ
「覚えていないならいいわ。忘れるわ」
「そう言われると気になるな!いつだよ?」
彼は私の肩に手を置くと至近距離で訴える。
「さぁ、いつだったかしらね。」
教えろ、教えないを繰り返しているうちに2人は笑い出す
「ま、いっか、今こんなに綺麗な月をキミて見ていられるんだから」
彼の言葉にドキッとする
その言葉に背中を押されたような気がした。
勇気を出して、深呼吸する
「あなたは私をどの様な感情で見ているのかしら?」
「感情?」
「あなたは女の子を同情で助けたりするけど、私も同情で見ているのかしら?」
「同情…か、残念だな、僕の気持ちはキミには伝わっていないって事だ」
彼は立ち上がり、砂を払う
「ちょっと!待ってよ!」
彼の後ろ姿に言葉を投げる
さすがに言い過ぎた。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ…ただ月を見ていたら昔のあなたや自分自身を思い出してしまって…」
立ち去ろうとした彼がくるっと方向をこちらに向ける。
「あのさ…キチンと言わせてもらうけど…キミの事同情で見た事はいちっどもないから!!」
「え?」
思わず立ち上がると、彼は笑いながら
「今日はここまで!」
と言い、背中を向けた。
「どう言う事なの?」
追いかけるフランソワーズを気にする事なく歩いているが、顔は恥ずかしさと笑いを隠すように俯いて歩いていた。
2019.9.3