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Stealth island

 

1

 

 

 

 

東南アジアのとある島

 

観光地として有名なその島は、沢山の観光客で賑わっていた。

 

島の近くには無数の無人島が存在している。

 

手付かずの自然が魅力で、わざわざ野営する観光客もいる。

 

無人島へ行くにはこの島から民間のクルーザーをチャーターする。
 

中には船だけを借りるものもいるが、アウトドアのベテランかプロの冒険家くらいなものだ。


 

島のビーチは色とりどりのパラソルの花が咲いている。

 

そんなリゾート地で浮かない顔をしている女性


 

先程から何人かの男に声を掛けられているが、言葉が通じないふりをして誤魔化している。
 

「もうっ!次の人について行っちゃうんだから!」
 

ビーチチェアから起き上がる

 

そんな彼女を見つけた男が駆け寄ろうとした瞬間


 

「ごめん!待たせた!」
 

女性は頬を膨らます
 

男性は悪びれもせず笑う

 

「次に声掛けられたら着いて行こうと思ったわ」
 

「すぐ見つけて連れ戻すから」


 

「ずいぶんな自信ね」
 

女性は挑発するが、男性は動じない

 

「うん、自信だけはあるかな?せっかくだから泳がない?」

 

男性は着ていたパーカーを女性に投げ、海に走って行った

 

「ちょっと!何?」

 

女性はそう口には出すがニコリと笑いビーチサンダルを脱ぎ捨て、ビキニ姿で走り出す


 

「負けないから!!」

 

「よーし!競争だ!!」


 

カップルの隙間をくぐり、海へ入ると2人はクロールで沖に向かう。

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

「それで何かわかったの?」


 

女性…フランソワーズは

男性…ジョーに問う

 

「この島からでは無理みたい、イワンも何も感じないと言っているし、それが現れる時間も不定期で、

船のように動くらしいから場所の特定が難しいみたいだ。

大体の場所がわかれば現れた時乗り込めるけど、それまではあちらの情報待ちという感じかな」

 

ジョーにはあちらといいながら、日本の方角を指差した。

 

「いつ現れるかわからないものをここでジッと待っているの?」
 

「観光、観光!久しぶりにゆっくりしようよ」
 

ジョーは笑いながら言う。
 

そんな笑っていられる事なのかしら。

 

「今晩はホテルのレストラン予約しておいたから。ドレスコードなしの地元料理のフルコース」

「色々なものは日本に任せ、指示が出るまで観光って何だか悪い気がするわ」

フランソワーズが躊躇する。

「指示が出たらキミに頑張ってもらわなきゃいけないからさ、それまで楽しもうよ」


 

呑気なジョーの様子に、今自分達がここにいる理由も、

これから起こるべき事への不安すら他人事のように思えるフランソワーズだった。

 

ジョーとビーチで遊び、ホテルに戻る。

 


 

全室オーシャンビューな客室


 

ジャグジーは海を見下ろし、花が浮かび、キングサイズのベッドや間接照明
 

ラグジュアリーな空間という言葉通り。

 

ジャグジーで戯れあい、ベッドで微睡む

 

夕陽が染まる頃、ホテルの敷地内にあるレストランでグラスを傾ける


 

夕陽が見えなくなると、テーブルに置かれているキャンドルが灯される

 


 

地元料理のフルコースは、不安になるような色の魚介はあったが、味は高級レストランに負けないものだった。
 


 

レストランの他の客はほとんどがハネムーンらしきカップルだった。

 

側から見たら

 


 

この2人もそう見えるだろうが…。

 

「私達が探している島って、どんな島なの?」
 

「人工島…らしいよ。」
 

「誰が何の為に…人工島を?」


 

「ステルス機能で見えなくしているんだから、良からぬ事してるんだろうね」


 

「良からぬ事…例えば?」


 

「さぁ、それを探るのが僕らの役目でしょ?」

 

その時

 

ジョーの携帯が震えると同時に、レストランから逃げ出した人影

 

「待て!!」

 

レストランの従業員が追いかける

 

フランソワーズには「見えた」
 

「…人間?」
 

ジョーが電話中、フランソワーズを見る。

3

蒼一色だった海と空が色を変える
 

空の下と海の上がオレンジ色に染まり始める。
 

寝返りをうつ途中で目を覚ましたフランソワーズ

 

「ん…」

 


 

身体を起こすと窓の外はオレンジだった。

 


 

「朝ね…」


 

少し伸びをすると、隣で眠る恋人にキスをする。
 

「…今日までね」

 

昨日の夜、フランソワーズは確かに「見た」

 

その姿は人間かと疑うものだった。

 

頭が異常に大きく、身体とアンバランスだった。
 

でも身軽に走って逃げていった。

 


 

水泳選手並みのクロールで向かった場所
 

それはフランソワーズにしか見えていなかっただろう。


 

島…というより、動く「要塞」
 

一瞬見えたが、すぐ消えた。
 

それと同時に日本のレーダーに反応があり、ピュンマからの電話にジョーが出ていた時だった。

 

ポイントが掴めたので、日が暮れたら近くの無人島に向かう。
 

次に「島」が出るのはいつの事かわからない。
 

それまで無人島暮らしとなる。
 

ジョーがこれから無人島の所有者に貸し切りの交渉をしに行く。

 

観光地としての無人島ではない。
 

だから手付かずの何もない島だ。
 

ピュンマからの指示なら仕方ない。

 

寝心地のいいベッドともお別れだ。

 

 



 

「バカンスも終わりね」
 

思わず口から出た独り言


 

「え…何?」

 

隣で眠っていたジョーが目を開ける。
 

「ごめんなさい、起こしちゃった?」
 

まだぼんやりと眠りの世界と行ったり来たりのようなジョーの顔にフランソワーズは微笑む。
 

まだ眠りたいと言った顔で「おはよう」と言う。

 

フランソワーズはそんなジョーにキスをする
 

「おはよう」
 

とびきりの笑顔と共に。

 

 


 

昼過ぎの市場は焼けるような暑さだった。
 

ジョーが島の所有者と交渉している間、フランソワーズは市場にいた。
 

無人島に持って行く物を少しは用意しようと思い、歩いていた。
 

地元住民の話が耳に入ってくる。

 

不思議な…宇宙人のような生き物の遭遇話があちこちから聞こえてきた。
 

昨日が初めてではないらしい。
 

市場でも物が盗られるなどの被害があるようだ。
 

人間?それとも…。


 

「ここにいたんだ」
 

ジョーがぽんと肩を叩く。
 

「島の所有者から許可が下りたから、夜には出発する」
 

フランソワーズは昨日の夜見た光景を思い出す。
 

あの「人間」もそうだが、一瞬見えた「要塞」
 

普段はフランソワーズさえも見えない。

 


 

おそらく…

 


 

あの「人間」が「要塞」に出入りする時にステルスが解除になり、一瞬レーダーに反応するのだろう。
 

一瞬ではあったけれど、島全部の「要塞」


 

あれを作れるのは…


 

市場の話を聞いていても、誘拐事件などはない。
 

何故あの「人間」はこの島に上陸するのか?
 

何の為?

 

 


 

ホテルに戻り、名残惜しく荷物をまとめる


 

「この件が早く片付けば、もう少しここに泊まれるかもしれないよ」

 

名残惜しさを感じたのか、ジョーが言う。
 

簡単に片付くはずがない。
 

あの要塞も人間離れした「生物」も


 

見えたから
 

見てしまったから
 

これから起こる避けられない戦いに不安が襲っていた。





 

4

無人島に渡ってから1週間



 

何かを感じたのか、あれから全く要塞もあの「人間」は姿を現さなかった。



 

「このまま現れるまで無人島暮らしなのかしら?」

 

初めは仕方ないと思っていたフランソワーズも段々とイラついて来ていた。


 

持ち込んだ食料も尽き始め、島の所有者にも島の使用を延長してもらいに行かなければならない。
 

「1人で大丈夫?」
 

テントの中で私服に着替えているジョーの声
 

昼間に動きはないだろうからと、ジョーだけが島の所有者に話に行く事になる。

 

「思った以上に手強い相手だよね。もう我々の前には現れない…とか?」
 

と、言いながらテントから出てきた。


 

「向こうからこっちは見えてる訳よね」


 

「僕らがこの島にいる限り…出てこない…とか?」

 

「でも…ここに来る前に遭遇した時は観光客が沢山いる場所だったわ…」


 

「すぐ戻るから。何かあったらすぐ連絡頂戴」


 

そう言い残しジョーは無人島を離れた。






 

フランソワーズは無人島に1人残される。
 

昼間とはいえ気味が悪い。


 

目を凝らしても、耳を澄ましても

 

そこに見えるものは


 

そこで聞こえるものは

 


 

青い空と
 

白い雲
 

穏やかな海と
 

1週間何も変化のない無人島

 


 

野生動物にも遭遇せず
 

あちこちに成っている木の実は食べられるのかすらわからない。
 

危険そうだからやめておく
 

毎日飽きる事なくやっている島の散策を終えると、テントに戻る。

 


 

夜は交代で眠りについていた。
 

熟睡とは言い難く、昼間にうとうとしてしまう。



 

それはほんの一瞬の出来事だった。


 

 そこには誰もいなかった。


 

 

5

フランソワーズは目を覚ます。

 

ここはどこかと考える前に、気を失う前の事を思い出す。

 

一瞬の出来事だったから夢なのかと思っていた。


 

「テレポーテーション?」
 

ここはどこか考える。


 

おそらく


 

あの要塞なんだろう。
 

あの時であった「人間」がフランソワーズをテレポーテーションさせた…と考えれば腑に落ちるが


 

何もない部屋だった


 

「お前は何者なんだ?」

 

突然現れた「人間」にフランソワーズはビクッとする。


 

「あなたは…」


 

あの時見た頭の大きい…多分「人間」


 

「お前にだけここが見えた」

 

「見えた?」

 

「ここはステルス機能が施され見えない筈なのに、なぜお前は簡単に見えたのだ」


 

「見えたって言っても一瞬よ、すぐ消えてしまったわ」

 

フランソワーズは相手を怒らせないように冷静に話す。
 

心の中は冷静ではなかったが…


 

「ここで何をしているの?あなたは一体?」

 

「サミシイ」

 

「え?」

 

 

 




 

ジョーは用事を済ませ、再び無人島に上陸する。

 

フランソワーズの姿がないのは想定内だ。

 

このままでは何も起こらないだろうとフランソワーズからの提案だった。

 

「私が1人になればきっと事態は変わると思うの」

 

「それって『囮』って事?」
 

「そうね、そうなるわね」
 

「危ないよ、囮なら僕がなるから」
 

「私でなければならないような気がするの、大丈夫よ!」

 

 


 

「本当に…大丈夫なのだろうか…」
 

フランソワーズへの通信も、GPSも通じない
 

「それも…想定内だけどね」


 

あとは「中」でフランソワーズがどう対処してくれるか…それだけだった。
 

「待つのは苦手だ」
 

ジョーは深く溜息をついた。



 

6

「サミシイ」

 

その言葉にフランソワーズの心がギュッとする。


 

「あなたは何故ここにいるの?」
 

「私はここで産まれた、ここで育てられた。ここ以外の世界を知らない」
 

「産まれた?あなたのご両親は?」
 

「私を作った者か?随分前に亡くなった」
 

作った…もの?


 

「あなたは…人間なの?」
 

フランソワーズは思わず透視した。
 

人間?

 

「自分でもよくわからない。気がついたらここにいた」
 

「その…『作った者』というのは?」
 

「科学者と言っていた。私には必要最低限の教育と栄養を与えてくれた。

私はまだ未完成で、完成したら科学者と研究を始めるつもりだった。」


 

「研究?」
 

「外の世界を脅かすもの…そして外の世界を混乱に陥れ…科学者は神となる」
 

「あなたは…それで…よかったの?」


 

「良くも悪くも、ここ以外知らない。科学者しか知らない」
 

フランソワーズは返す言葉を失っていた。
 

科学者がもし…
 

研究しようとしていた物
 

世界を脅かし、神となる方法
 

容易に想像出来た。


 

このステルス要塞を簡単に作ってしまい、目の前の頭の大きな『生物』を作る事が出来る…。

 

資金と力、才能
 

思いつくトコロは一つだけ


 

まだこのような『あれから散らばった』科学者が膨大な資金を持ち存在する。
 

一度甘い汁を吸ってしまうと…再び表舞台に立つ日を、自分の才能を世界に知らしめる為に

密かに殺人兵器を作り続ける科学者達が存在している事実を思い知らされた。




 

そうなるとこの人は

 

被害者

 


 

自分と同じ…。
 


 

「あなたの名前は?私は…」
 

「名前とは何だ?そんなものはない」

 

「え…?」

7

「亡くなった…その…科学者は今は?」

 

「動かなくなったから、海に捨てた」


 

フランソワーズは背筋がヒヤリとする感覚に襲われた。

 

「あなたはそれからずっと1人で…」



 

「教育は受け続けた、能力とやらも身につけた…でも果てしない時間1人だった…

コンピューターは必要な事しか教えない、必要な栄養しか与えない…いつからか外の世界が見たくなった」

 

「それであの島に?」
 

「ここから出る時にステルスを解除しなければならない。ここに生命反応がなくなった時、

コンピューターにより、自動的に爆破しる。それは科学者が入れたプログラミングで私には解除出来なかった。

出来たのは僅かなステルスの解除。

身につけた瞬間移動で、コンピューターを騙せるようになった。

ほんの僅かな時間島に行く事が出来た。」

 

「そして僅かなステルスの解除で…姿を目撃されたのね」
 

「お前も…私と同じ何かを持っている…私と共にここで科学者のやっていた研究を完成させよう」

 

「それは…できないの」


 

 

 


 

「ジョー!お待たせ」
 

ピュンマがイワンを抱いて無人島にやってきた。

 

「イワン、おはよう」
 

「目覚めた途端無人島かい?」
 

「キミが眠っている間に事態は随分変わったんだ、フランソワーズがあの要塞に捕らえたれた」
 

「話はピュンマから聞いている…全く無茶な」

 


 

「フランソワーズが中からステルスを解除してくれたら要塞が現れるんだけど…」

 

「その必要はないみたいだ、強い念を感じる。要塞の主はエスパーなのか?」


 

「わからない、何の情報も…あ、そうだ!フランソワーズが物凄い速さで走っていたって…」

 

「とにかくその念を辿れば場所が特定出来る。近くまで行ってみよう」



 

「さっすが!仕事が早い!」


 

ピュンマはジョーを見て笑う

 

ジョーも一つ頷いた。

8

「何故出来ないのだ?」

 

「あなたが…いえ、あなたを『造った』科学者がやろうとしていた事に賛同出来ないから…

このまま続けていたら…あなたは…沢山の人を殺す事になるわ…それでもいいの?」


 

「では何故お前は私を気にかけたのだ?」
 

「気にかけた?」

 

「私を追いかけたではないか」
 

初めて会った時の事を言っているのだと気づくのに少し時間がかかった。


 

「あなた…いえ、この要塞で何かが起こっている事がわかったから調べていたのよ。

私はあなたが兵器を作り続けるのなら…」


 

フランソワーズは銃口を頭の大きな男に向ける

「やめさせないといけない」
 

「そんな物でワタシを殺せるとでも?」

 

瞬間
 

銃はフランソワーズの手から離れ、宙を舞い、床に落ちた。



 

フランソワーズはため息をつく。


 

「あなたのその『チカラ』を人々を脅やかすのではなく、人々の為になるように使えないのかしら…

あなたなら出来ると思うわ…きっと」

 


 

「この姿を見て気味悪がる者たちの為に…か?」


 

フランソワーズも最初に遭遇した時はゾッとした。


 

自分が何者かもわからない。
 

何の為にここにいるのかもわからない。


 

ただ「創った」科学者の言っていた事に従うしかなかった。
 

その科学者も今はいない。


 

フランソワーズは自分の運命と重ね合わせてしまっていた。


 

科学者のエゴの為に犠牲になっている目の前の名前すらない、人間にすら見えないその「生き物」

 

ここから出れたとしても、人間の世界で暮らして行くのは難しいだろう。
 

ここでずっと1人で、もういない科学者の為に研究をし続けるのか?

 

世界を脅かすものを
 

自分の意志ではないのに

 

何とかして…フランソワーズは必死に解決策を探していた。

9

「あなたをここから出せるかもしれないわ!私達の所に来れば、博士が生活しやすいようにしてくれるし、

あなたと同じ能力を持った『仲間』もいるから、これからヒトとして生きていく事もできると思うの!」

 

男はフランソワーズの話を表情なく聞いている。


 

「ここから離れなれないのに、そんな事は出来ない。お前とここで暮らす」


 

「ここで暮らしていく事はあなたにとってもいい事ではないのよ、もうあなたを縛るものはないの。

ここから逃げましょう!」

「フランソワーズ」
 

イワンの声が聞こえた。

 


 

その瞬間


 

ピュンマとジョー、ピュンマに抱かれたイワンの姿が目の前に現れた。

 

「みんな!」
 

フランソワーズは歓喜の声を上げる。
 

ジョーはフランソワーズを見ると大きく頷いた。



 

「イワン、彼を…ここから出して欲しいの。博士に手術をしてもらって…」

 

「フランソワーズ、それは出来ないんだ」

 

「え?」

 

イワンはピュンマの腕からフランソワーズの腕に移される。

 

フランソワーズはイワンに「出来ないって…どうして?」と問いかける。

 

「この男はこの要塞と一心同体のようなものなのだ、彼の全てはこの要塞にある」

「この要塞内に生命反応がなくなったら爆発すると言う事でしょ?
あなたがテレポーテーションすれば問題はないはずよ!

あの人も超能力を持っているわ。

彼もイワンと同時にテレポーテーションすれば問題はないはずよ!」


 

「それだけではないんだ」

「え?」


 

「彼は…ここでしか生きられないんだ。

彼はこの要塞が作り出す栄養素を食糧としている。この要塞がなくなれば…彼の食糧も失う」


 

「そんな事…」

 

「科学者がその様に彼の身体を作ったのだ」

 

「彼は…いったい?」
 

ピュンマがイワンに聞いた。


 

「アンドロイド…という言葉が1番近いだろう。」
 

「そんな…事って…」

「そしてもう一つ、今わかった事だけど」

イワンがフランソワーズの腕の中で少し動く
 

「この要塞の自爆装置が作動した様だ…」

 

「何故?生体反応はあるはずじゃない!」

 

「私が押した」

男はフランソワーズの前に立つ

「こうなる事は前からわかっていた、お前をここに連れてきたのは、存在を誰かに気づ

いてもらいたかったのかもしれない」

 

「まだ望みがあるかも知れないわ!食糧だって…その栄養素を作ればいいじゃない!」

フランソワーズは叫び続けた。

「もういい…早く逃げろ」

 

その言葉と同時にフランソワーズは気を失った。

10

ホテルを離れ、無人島に渡ってから半月くらい経っていた。


 

窓の外の景色は無人島に渡る前と変わりなく



 

目の前の景色に変化はないが、フランソワーズの心の中には深い悲しみと憤りでいっぱいになっていた。




 

何もせずただ部屋のバルコニーに腰掛け、外の景色をぼんやり眺めているだけ。


 

私達が場所を突き止めたから?
 

もう少し時間があれば助けられたかもしれない
 

彼にだって…生きる権利はあった筈!





 

ジョーはそんなフランソワーズの姿を何も出来ず見守っていた。

 

全て終わり、博士に報告した時に、フランソワーズが落ち着くまでしばらくホテルに滞在していなさい。

と言われた。


 

帰った方が気分が変わるのでは?と考えたが、フランソワーズは何も言わずホテルに戻った。

 

そしてバルコニーのチェアに座り、ただぼんやりと海を眺めている。

 

ぼんやりはしていない、頭の中は色々な感情が戦っている。



 

ジョーはフランソワーズの背後に回ると後ろから抱きしめた。


 

フランソワーズがビクっとした。

 

「日が暮れたら付き合って欲しい場所があるんだ」

 

 

 



 

日が暮れたビーチにはたくさんの人がいた。

 

手にはランタン
 

合図と共にランタンは手から離れる。
 

沢山のランタンが空に向かって飛んで行く


 

「ここで行われるスカイランタンは、死者を弔うものらしい。まるで日本の灯籠流しみたいだ」

 

ランタンの淡い光が漆黒の空に吸い込まれていく。
 

それはとても美しく、儚い。

 

フランソワーズは涙を堪えられなかった。
 


 

「彼が行動を起こしたのはきっと…自分を造った科学者へ抗う事だったんだと思う」

 

ジョーの言葉にフランソワーズは顔をあげる

 

「こうなる事は能力で予想出来ていたのだろう…それに彼にとって唯一の人としていられた瞬間は…

キミと話をしたあの時なのかもしれない…」



 

フランソワーズはハッとする。

 


 

「彼はきっとキミに感謝しているよ」

 

ジョーはフランソワーズの肩を抱く。

 

 


 

フランソワーズは空に吸い込まれるランタンを見つめた



 

アリガトウ



 

声が聞こえたような…気がした。



 

END

2019.6.10〜11.16

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